もし地球が、赤道のあたりまで氷に覆われていたとしたら——。そんな時代が、実際にあったと考えられています。
今、この記事を読んでいるあなたも、動物も植物もキノコも、実はこの極寒の時代を生き延びた生き物の子孫かもしれません。
第8回では、巨大な衝突でできたかもしれない月の話をしました。今回は地球の歴史に戻って、「全球凍結(スノーボールアース)」を取り上げます。
この記事では、
- 全球凍結とは何か
- 地球46億年=1年のカレンダーで見ると、いつ起きたのか
- なぜ「凍っていた」と言えるのか
- 凍った地球で、生き物はどこに隠れていたのか
- 本当に「完全に」凍っていたのか
を順番に見ていきます。
地球カレンダーで見る全球凍結
| 地球カレンダー | 出来事 |
|---|---|
| 11月4日ごろ | 全球凍結が始まる(約7億2000万年前) |
| 11月11日ごろ | 全球凍結が終わる(約6億3500万年前) |
| 11月18日ごろ | カンブリア爆発(第5回) |
| 11月27日ごろ | オルドビス紀末の大量絶滅 |
※地球46億年を1年(365日)に換算したおおよその日付です。
第3回で見た大酸化イベントの氷河期は、6月〜7月ごろの出来事でした。今回の全球凍結は、それよりずっと後、動物が一気に増える(カンブリア爆発)直前の話です。
①氷が赤道まで届いた地球
全球凍結(スノーボールアース)
約7億2000万〜6億3500万年前、地球の広い範囲が氷に覆われた時代。
この時代には、2回の大きな氷河期があったとされています。1回目は約7億1700万〜6億5800万年前ごろで、6000万年近く続いたと見られています。2回目はそのあとに来ましたが、続いた期間は研究によって幅があり、今も調べが進んでいます。
「雪だるま(スノーボール)」という名前の通り、氷が極地だけでなく赤道付近にまで達したと考えられているのが特徴です。
②なぜ「凍っていた」と言えるのか
何億年も前のことを、どうやって調べるのでしょうか。手がかりは、氷河が運んだ砂や石が残った地層です。
スコットランドには、この時代の氷河の跡がよく残った地層があり、年代を測り直す研究も報告されています。また、アメリカ・コロラド州の岩石を調べた研究では、当時の赤道付近の大陸の内部にまで氷の影響が及んでいた物理的な証拠が見つかった、と研究者が述べています。
③それでも、命は生き延びた
避難所の候補:氷の上にできた水たまり
2025年、MITなどの研究チームが提案した説。
全球凍結の時代にも、生き物は生き残っていました。その子孫が、いまの私たちです。では、どこで?
MITの研究チームは、南極の氷の上にできた水たまりに注目しました。そこで採取した試料を調べたところ、さまざまな真核生物(細胞の中に「核」を持つ生き物のグループ。動物も植物もキノコも、私たちヒトもこの仲間です)が暮らしていることが分かりました。
全球凍結の時代にも、赤道付近の比較的薄い氷の上には、暗い色のほこりがたまり、日光を吸収して溶けた水たまりができた可能性があります。水温は0℃前後。そこが、生き物のオアシスになっていたかもしれない、という考えです。
ただし、これはあくまで「避難所の有力な候補」です。当時の水たまりで本当にそうだったと確かめられたわけではありません。
④本当に、完全に凍っていたのか
実は、「全球凍結」がどこまで凍っていたのかは、今も議論が続いています。
完全に凍っていたとする「スノーボール(雪玉)」に対して、一部は溶けていたとする考え方は「スラッシュボール(シャーベット)」と呼ばれます。
2023年には、中国・湖北省の黒い泥岩から、海藻とみられる化石が見つかったことが報じられました。2回目の氷河期の終わりごろの化石で、研究者は、生き物が暮らせる海が中緯度にまで広がっていた可能性を指摘しています。
さらに2026年2月、サウサンプトン大学などのチームが、1回目の氷河期の地層を調べた結果を発表しました。調べたのは、スコットランドの約2640枚の縞模様。1年に1枚ずつ積もったと考えられる地層です。この縞の厚さの変化から、数年〜数十年、100年規模の気候の周期が見つかり、太陽の活動の周期や、エルニーニョのような変動に似たものがあったと報告されています。
ただし研究チーム自身は、全球凍結の基本の状態は「極めて寒く、安定していた」と述べています。完全に氷で閉じた海ではこうした変動は起きにくいという気候シミュレーションの結果もあり、一時的に氷のない熱帯の海があった可能性など、まだ説明がつかない部分も残っています。
言えること、言えないこと
言えること
- 約7億2000万〜6億3500万年前に、赤道付近まで氷に覆われた時代があったとされている
- 生き物は、その時代を生き延びた
- 氷の上の水たまりは、避難所になりえる環境である
言えないこと
- 地球が完全に凍っていたのか、一部は溶けていたのかは、まだ決まっていない
- 実際に水たまりが避難所だったのかは、確かめられていない
おわりに:凍った地球の先に、動物の時代が来た
全球凍結が終わった後の時代には、大きな体を持つ生き物の化石が現れ始めます。そして第5回で見たように、地球カレンダーの11月18日ごろ、カンブリア爆発が起きました。氷の時代と生き物の進化の間に関係があるのではないか、と考える研究者もいます。ただ、その関係はまだ解き明かされていません。
第3回では、酸素が氷河期を呼んだかもしれない、という話をしました。今回は、地球が凍っても命は消えなかった、という話です。環境が大きく変わるたびに、命は姿を変えながら、細くつながってきたのかもしれません。
第1回「地球は5回滅びかけていた。そして今、6回目が進行中」、第2回〜第8回もあわせてどうぞ。
参考文献
- Husain, F. et al. (2025) 南極の氷上の水たまりの真核生物に関する研究. Nature Communications. 【論文名・巻号 要確認】
- Griffin, C. et al. (2026) スコットランド・Port Askaig層の縞模様と気候変動に関する研究. Earth and Planetary Science Letters. 【論文名・巻号 要確認】
- University of Southampton (2026) Ancient rocks reveal annual climate cycles during snowball Earth. (プレスリリース、2026年2月)
- MIT News (2025) When Earth iced over, early life may have sheltered in meltwater ponds. (2025年6月19日)
- Song, H. et al. (2023) 中国・湖北省の海藻化石に関する研究. 【論文名・雑誌 要確認】(Reuters報道, 2023年4月)
- Port Askaig層の年代測定(2025年)、コロラドの岩石の研究 【出典 要確認】
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